福井正之
※本書は「手記」のようだと考えるし、著者は誠実に書いていると思うが、誠実であろうとなかろうと、実際にあったこととはずれてくる。少なからずフィクショナルな要素も入ってくるかもしれない。 ここでは、あくまで作品に描かれたことに即して見ていこうと…
〇本書を通して、私の関心は大きく二つある。 (1)ヤマギシズム社会の『金の要らない楽しい村』、実際の「村」のなかでは、お金のやり取りが介在しない暮らしと、「村」離脱後の何事もお金=賃労働を考えざるを得ない暮らしとの違い。(2)ヤマギシの「村」…
〇新刊福井著『「金要らぬ村」を出る…』の書評をブログに掲載した後、著者からある人の新刊感想文の連絡を受けた。 それは心にしみるような感想と文学的な観点のある文章で、私の書評にはないものだった。 私の書評は、素直な感想というより本書の背景となる…
〇新刊の書評に入る前に、私が思っている、福井氏の来し方に触れてみる。 人はある時、心が躍る出来事に出会う。その「虹」のようなものに劇的な感慨を覚えて、その人の生き方につきまとうことがある。 あるいは、ある出来事と遭遇することで、その後の生き…
※この度の新刊、福井正之著『「金要らぬ村」を出る…』は、2018年刊行の『追わずとも牛は往く』と繋がりがあると思っていて、その書について触れてみる。 〇タイトル『追わずとも牛は往く』の副題として「労働義務のない村で」とある。 本書の特質として…
〇「金の要らない楽しい村」と「ベーシックインカム(BI)」 先日、国民に一律10万円を給付する「特別定額給付金」が届いた。 現在無収入の私たちにとって、コロナによる収入的な影響はないが、特殊な共同体にいたので国民年金も妻と併せて年110万程であり、…
〇8月下旬(24日予定)に、福井正之さんの新刊『〝金要らぬ村〟を出る…』が出版されます。 70代半ば過ぎの2018年に、初めての刊行作品『追わずとも牛は往く』の自費出版をしました。 その後、身体的な「衰え」を感じつつ、次なる営みとして、さらに作…
〇今年7月から福井正之さんが、それまでのブログ『わが学究、人生の機微」を中断し、新たに、『回顧―理念ある暮らし、その周辺』として再開しました。 その経過は、2019年07月06日掲載の「ブログ再開の弁」に書かれています。 現在まで45編の記事があり、㉜…
〇本書は、著者の40年ほど前の1976年から2年程の「北海道試験場」(「北試」―ヤマギシ会)の体験をふまえ、書き進められた記録文学である。 実際の「北試」というより、その可能性をひろげた著者自身の想定した「睦みの里」であり、著者から見たヤマギシズム…
〇夢太き人と大地と春の空 福井正之氏の『追わずとも牛は往く』が出版された。 この小説のエピローグの最後は、次のようになる。 〈「このことは人生についても言えるだろう。死期に近づけば近づくほど人生を右肩上がりに描きたくなる。丈雄ももはや七十半ば…