新山岸巳代蔵伝
3 根本問題から究明しなければ、永続する養鶏は成り立たない 一九三四年九月に室戸台風にあって鶏舎は大損害を受け、それを機会に下京区の台風で倒れた養鶏場を買って移転することになる。その頃について次のように述べている。《その後風害に遭遇し、それを…
第三章 社会や人生のあり方を根本的に究明することが先決 1 一定の師がなく、型がなく 二一歳から郷里で小規模の養鶏をはじめた。この頃について千代吉は、 「実に熱心なもんやった。いつ寝ていつ起きるのか皆目見当つかんことやった。わしがいつ起きても仕…
2 青春彷徨と、その時代背景 この稿では山岸巳代蔵の青年期二〇歳前後の社会状況をみていく。 『山岸会養鶏法 農業養鶏編』「六 本養鶏法の沿革」(一九五四年二月)は次の記述から始まる。《六 本養鶏法の沿革 ・月界への通路 私は一九歳の時、或る壁にぶ…
第二章 人間の生活は一生を通じて遊戯であり1 何しにこんなところへ来んならんかな 一九二一年二〇歳の時に、郷里に帰って徴兵検査を受けた。検査場は近江八幡、検査の結果は乙種であった。それに関して語っている発言は山岸らしいものである。《------もう…
〇中島岳志×島薗進『愛国と信仰の構造』を読みながら、山岸巳代蔵とヤマギシズム運動について考えていた。 そこで中島岳志は、「明治期に近代化の過程で『自己とは何ぞや』と悩んだ煩悶青年らの潮流が国体論的なユートピア主義に傾倒し、その煩悶青年の一部…
第一章 理想は方法によって実現し得る4 ある壁にぶつかり、苦悩の内に一生かけての仕事を始める 一九一六年(大正五)、山岸は一五歳で高等小学校を卒業し、学校の募集に応じて京都の今出川にある大橋商店という絹問屋に奉公に出る。しかし罵り合い喧嘩が絶え…
第一章 理想は方法によって実現し得る3 優柔不断が本当 先の「子供の時分を想い出して」の文中に、熟慮断行と優柔不断について述べている。そこに、「少年期に一見優柔不断に見えるような恥ずかしがりであったらしいが、熟慮断行の人になろうとしていた」と…
〇『山岸巳代蔵全集』刊行の終了に伴って、その手引きとなるようなものの必要性を覚え、全集刊行・編集の過程で明確になった事実経過をふまえ、俯瞰的な観点から伝記形式にまとめ、『山岸巳代蔵伝―自然と人為の調和を―』を2012年に刊行した。 その後、ヤ…