○実顕地での振出寮
1992年5月12日に「参画者振出寮」は始まる。テーマは「振出に戻る」。99年2月まで続く。その間ずっと係として関わっていた。
振出寮では、わたしはリーダーとして、中心的な役割を担っていて、ここで行ったことの責任はおおかた、わたしにあると考えている。
実顕地での振出寮は参画者対象で、山岸巳代蔵の構想を鑑みて描いたものである。
実際には東部実顕地の一角に寮を設け、ありあわせの食べ物と寝るところがあり、最低限生きていけるような配慮はしてあるが、特に他には何もない「ないで当り前」の環境で、無期限過ごしていくだけである。
この振出寮は、机上の境地ではなく、個人的な鍛錬などによるものではなく、誰でもがそのような環境に身をおくことで、「無い」ということの充実した一端を垣間見ることができる具現方式として、とても面白い仕組みだなと思っていた。
この環境、仕組みに対し、際立った印象を持って寮を出発していった人も、かなりいたのではないだろうか。
また、その頃参画者がかなり増えた。
参画者は、何かの契機でヤマギシ会に関心をいだき、まず特別講習研鑽会(その期間は1週間[7泊8日]で,一生に一度しか参加できない。)に参加し,そこに興味を覚える何かがあれば、次にヤマギシズム研鑽学校に2週間(14泊15日)入校し,ヤマギシズムとは何かをある程度体得し、共鳴する人は参画を希望する。
参画申込書には,「私,及び私の家族は,最も正しいヤマギシズム生活を希望しますので,ヤマギシズム生活実顕地調正機関に参画申込み致します。」との記載,出資明細申込書には,「私は終生ヤマギシズム生活を希望しますので,下記の通りいっさいの人財・雑財を出資いたします。」との記載がある。
学園生以外の一般の人が実顕地に参画するときは、偏った情報であれ、状況は様々だが、大方は一人ひとりの熟考の末参画した。どこかの組織のように、強引にだまして連れてこられたというより、調べる期間が長くとってあり、それぞれが熟慮して参画してきた。
ところが、実顕地での挙動を見ていると、なんでこの人参画してきたのだろうか、目に余るような人もいた。
むろんその頃の実顕地も、数々のおかしなこともあるとしても。
そこで、実顕地の世話係からその人に対し、実顕地参画者としてやるなら、振出寮でじっくり調べてほしいと、入寮してきた人もいる。
振出寮の大きな目標は、生きていくのに最低限の環境を体験することで、日々の暮らしを見直し、振出しに戻ること。
また、何人かの方に対して、実顕地参画者として活動するなら、参画時の気持ちを振りかえり、その人自身の実顕地での挙動を見直すことも、わたしは願っていた。